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映画「ゼログラビティ」宇宙を体感する映画

IMAX 3Dで「ゼログラビティ」を観た。

 

あまりに評判がいいので期待値はパンパンに膨れ上がっていたが、その期待を軽々飛び越えるとんでもない映画だった。

そもそも私はパニック映画が好きではない。それはきっとただ単に観客に怖い思いをさせることが目的で、観終わったあと心に何も響くものがないというケースが多かったからだと思っていた。で、この映画はどうかというと、まさしくそういう映画なのだ。主人公の過去や葛藤も多少は描かれているのだが、特別心奪われるものではない。あれ?ではなぜこんなにこの映画に惹かれているのだろう。

一つは私がある程度宇宙が好きで、なおかつそのテクノロジーに憧れを抱いていること。いわゆる「宇宙萌え」。そしてそれがかなりリアルに体感できたからだと思う。すでに色んなところで言われているが、この映画の宇宙疑似体験感は半端じゃない。ふわふわと宇宙に浮く心地よさや、吸い込まれるような孤独感、そして逃げ出したくなるような息苦しさはまさに主人公の感覚にかなり近いものだった。

もう一つは圧倒的に美しいビジュアルに込められたメタファー。

(以下、若干ネタバレします)

 

これも散々言われていることだが、ISSにたどり着いたライアンが宇宙服を脱ぎ、ゆっくりと胎児のように丸まっていくシーン。ゆらめく酸素チューブはへその緒の暗喩だそうだ。息詰まる空間から解放されてようやく一息つけるこのシーンはとても美しく印象的。死を意識させる宇宙空間と生(誕生)の対比の仕方がとてもうまい。「2001年宇宙の旅」では宇宙船ディスカバリー号のデザインは精子の、スターゲイトはヴァギナのメタファーだった。スターチャイルドは胎児そのものだったし、全編通して「死と誕生」をテーマとした映画だ。「ゼログラビティ」が「2001年」を意識して作られたのかどうかはしらないが、宇宙映画とこのテーマはすごく相性のいいもののように思う。メタファーを言葉で補完するのは興ざめなのでこのくらいにしておくが、他にもいろいろ意味深なセリフやものがあるようだ。

宇宙人やモンスターが出てくるわけではなく、クルーとの厚い友情が描かれるでもなし。ヒューストン側が一丸となって救助のために奔走する様子も見せないし、唯一生き残った仲間が死んでいく過程も描いていない。ただひたすらの孤独と絶望。人類が自らの意思で危険を承知で宇宙の旅に出て、絶望的な状況の中、活路を見出していく。ライアンは「宇宙なんて大嫌い」と言いながら、最後には「たとえどんな結果になってもこの旅は最高だった」というセリフ。ラストシーンで主人公がグラビティ(重力)を噛みしめながら立ち上がるシーンをみてしみじみ思う。それでも人類は宇宙に憧れる。

映画を観終わって、私は心打たれるものがあっただろうか。よくわからない。残ったのは宇宙への憧れだけ。だがこの映画はそれでいいのではないかと思う。厚みのある人間ドラマはむしろジャマ。極上の心地よさと恐怖と開放感を味わえる、いい映画だと思う。

 

余談だが私は月に土地を所有している。1エーカー(約1200坪)3000円くらい。ここで買えます。誕生日プレゼントにもらった土地だが、生きているうちに宇宙に行けるかどうかはわからない。でもこれだけリアルな疑似体験ができるようになるとはなあ。

 

 

まだ観ていない人は是非 IMAX 3Dでどうぞ。宇宙が好きになって嫌いになって、最後にやっぱり宇宙すてきって思うことでしょう。