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饅頭こわい お茶こわい

本好きのただの日記。こわいこわいで食べ放題。

よしながふみ「大奥」の史実と創作の境はどこ?

このエントリーは よしながふみ「大奥」のネタバレしてます。これから読む人は要注意。

 

大奥 10 (ジェッツコミックス)

これ書いてる時点で十巻まで刊行。ドラマ化も映画化もされたので言わずと知れたであろう男女逆転大奥。

このころの堺雅人の優しい微笑みはほんと違和感だらけだった。観てないけど。最近のアクの強いキャラの方がよほどあってると思う。

 

 

余談はさておき、

 

この物語はすでに男女が逆転した吉宗の時代から始まる。若い男性にしか罹らない"赤面疱瘡”の流行によって男の数が激減し、女性が家督を継ぐのが当たり前になった世の中に徳川吉宗 (女) は登場する。大奥に眠っていた”没日録”を紐解くことによって、吉宗はほんの百数十年前までは男の数は女と同じほどたくさんいたことを知る。それは大奥制度が始まってまもなく、三代家光から続く悲しき業を背負わされた者たちの記録であった。没日録を記し続けてきた御右筆 村瀬は吉宗にこの事実を伝えた直後に事切れる。吉宗は赤面疱瘡の根絶を胸に誓うのだった。

と、まあ大筋を書くとこんな感じ。序盤の家光篇や綱吉篇は世の中が男女逆転するに至った顛末が描かれており、話の流れとして非常に重要な部分だし、派手でドラマチックな話なので面白いのだが、欲や嫉妬にまみれた男女のドロドロとした昼ドラのような展開が正直私は苦手だった。が、次第に話は実際の歴史上の事件を絡めて壮大な歴史絵巻になっていく。史実を変えることなく逆転の世界を作り上げ、なおかつ描かれるのは一人一人の細かい心理描写。この素晴らしいバランス感覚にいつしか私ははまっていった。作者の筆が遅いため、新刊が出るころには前の巻までの話はすっかり忘れてしまう。その都度ひっぱり出して読み返すことになるのだが、この漫画、読み返す度に新しい発見がたくさんあるのだ。もう何度も読み返しているが、登場人物の多さとキャラクターの顔が似ている(美人はたいがい同じ顔)せいで未だに全部把握できない。時間軸も行ったり来たりしているので読み返すと、ああこの人こんなとこで出てきてたんだ、てなことがいくつもある。誰かこの「大奥」の年表作ってくれないかなー。実際の歴史年表と二つ並べて比較してみたい。どこが史実でどこが創作なのか教えて欲しい。こんなことを考えてしまうのもこの作品の魅力の一つだったりする。(ちなみに白泉社のサイトには家系図があった。とてもわかりやすいのだが現時点で八代 吉宗までしかないのが残念。でこちらが実際の家系図。かなり横に長いのは子だくさんな家斉のせいか。)

 

赤穂浪士討ち入りの話や江島生島事件の話は圧巻だった。気になったのは八巻で登場する板前 芳三とお幸の方の話。

お幸の方(男)は公家の出で、九代将軍 家重(女)の正室 比宮(男)の御側付として江戸に入った。比宮が若くして亡くなり、京の許嫁のもとへ帰ろうとしているところへ家重の側室になるようにとの命が届く。拒むお幸を強引にとどめる家重には恨まれてでも人の気持ちを自分に向けたいという悲しい業があったのだ。やがてお幸は嫡子 竹姫(後の家治 -女です)を出産。だが家重はその後わざとらしく他の男との仲を見せつけるようになる。お幸は相手の男に刃傷沙汰を起こし投獄されてしまう。お幸の抱いた感情は地位を危ぶむものではなく男としての嫉妬だった。座敷牢の中で自ら死を望み、食事にも一切手をつけなくなったお幸。牢に食事を運んだ御仲居の芳三はそれを聞いて自分の運命と重ね合わせる。当時は下賤の魚と言われていた鰻を蒲焼きにして献上し、お幸は笑顔で箸をつけるのであった。

この話、作品全体の中ではあまり目立つ話ではない。実際の歴史上でも小さな事件だろうと思う。芳三という人物は作者の創作なのだろうか。史実を曲げずに地味な話をとても魅力的に演出しているなと思う。

 

この先はどんな展開になっていくのだろう。十巻で田沼意次の失脚により赤面疱瘡の根絶はなされなかったが、十一代将軍 家斉は男子に戻るようだ。夜の暴れん坊、徳川一の子だくさん家斉はどう描かれるのか。幕末まで将軍はあと五人。逆転した世の中をどう戻すのか楽しみだ。

 

 

この漫画を何度も読み返すうちにちょっと不思議な感覚にとらわれた。ネットで吉宗や田沼意次のことを調べていると、男として書かれていることに違和感を感じてしまったのだ。あそっか、実際は女じゃないんだよね。わははー。

 

 

 

 

 

 

 

大奥こわい。疱瘡こわい。

(これこのブログの決まりとして毎回入れようと思ったけど、全然上手いこと言えないのでもうやめる)

 

 

「大奥」が壮大すぎてよくわからなくなってきたので11巻までのあらすじをまとめてみた - 饅頭こわい お茶こわい

 

 

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